需要と供給 supply and demand 2003 7 21

 もう1か月前でしょうか。こんなことがありました。
あるビールが人気で、品薄の状態になり、ついに品切れとなってしまいました。
メーカーは、まさか、そんなに売れるとは思っていなかったので、
生産が間に合わなくなってしまった。
供給できるのは、1か月後となる見込みであると伝えられた。
結局、消費者は、当分の間、人気のビールが買えなくなった。
メーカーは、当分の間、販売機会の損失となった。
 また、春先には、あるゲーム機が人気となり、
これは、品切れではなくて、あっという間に、完売となってしまった。
 販売店は、これほど人気があるから、もっと売りたかったが、
売りたくても、物がなくなってしまい、販売できなくなってしまった。
 このゲーム機は、従来は、黒いボディーだったが、
春を意識して、春色のボディーカラーにしたところ、
子供や女性に人気がでて、あっという間に、売り切れとなった。
どういう訳か、従来の色のゲーム機も、しばらくの間、品切れ状態となった。
やはり、メーカーは、販売機会の損失となった。
春先の出来事でした。
 このように、品切れになってしまうと、
消費者も困るが、メーカーも困ります。
 しかし、このように人気がでても、商品の価格は上昇しないで、
単純に品切れとなるだけです。
価格が硬直化していますので、このような事態になります。
 さて、あるパソコンメーカーは、
こういう事態にならないような販売方法を取っていました。
それは、インターネットで、消費者から、パソコンの注文を受けています。
メーカーは、注文を受けてから、パソコンを生産します。
そのため、消費者にパソコンが届くのは、
注文を受けてから、何日か後になります。
 しかし、消費者にとっては、それを、特に気にしません。
それは、他のメーカーのパソコンより、安く、サービスも充実しているからです。
メーカーも、工場直販であるので、安く消費者に供給できます。
さらに、注文を受けてから生産しますので、余計な在庫は発生しません。
このようにして、このパソコンメーカーは、世界有数のパソコンメーカーとなりました。
 ところで、株式市場は、どうなっているでしょうか。
株式市場では、株が商品です。
株式市場でも、ビールと同じように、人気となる株があります。
人気株は、買いたい投資家が増えますので、供給より、需要の方が大きくなります。
しかし、ビールと違い、人気が出れば、価格が上昇します。
このため、価格が上昇して、つまり、株価が上昇しすぎると、
その人気株を買うことをあきらめる投資家も出てきます。
また、価格が上昇したので、売却する投資家も出てきます。
こうして、株が市場に供給されます。
この結果、需要と供給がバランスが取れ、価格も安定し、
株という商品を手に入れることができます。
商品のように、品切れとなることはありません。
 ただし、時々、事件がおきます。
歴史的に有名なのが、「南海会社の株価暴落事件」でした。
南海会社という株が、数ヶ月のうちに急騰し、
一説には、株価が、一時期、10倍となったが、
半年もしないうちに、株価が5分の1になってしまったという事件です。
このため、多くの投資家が破産しました。
今から、300年前の事件でした。
 その当時は、金融技術というものが発達してなかったので、
このような悲劇となりました。
現在では、このような悲劇が起きないようなシステムがあります。
一種の保険のようなものです。
 この金融技術というものは、実際には複雑ですが、
ここでは、わかりやすく、単純化して説明します。
それは、たとえれば、「現物株の買い」と「信用売り」の組み合わせとなります。
 人気株になってしまうと、何日も続けて、株価が上昇します。
しかし、永久に上昇する株はありませんので、
投資家は、このような行動をとる投資家もいます。
人気となっている株は、ある程度、すでに株価が上昇しています。
そのため、現物株を200株ほど買い、信用売りを100株ほどします。
翌日も、株価が上昇したら、同じことをします。
株価の上昇が、1週間も続いたら、過熱していると考えて、
信用売りの方を多くするかもしれません。
 こうすると、万が一、株価が10分の1になっても、
信用売りがありますので、リスクが回避できます。
株価が暴落して、破産することはありません。
信用売りとは、株価が下がれば下がるほど、利益が大きくなります。
 ただし、暴落とは反対に、人気が永続的となってしまい、
株価が、高値安定となってしまう場合があります。
この場合、信用売りをした100株は、損をします。
ただし、同時に、現物株を200株買っていますので、
総合的には、利益がでます。
以上は、説明のために単純化しました。
実際には、もっと複雑な方法となりますが、趣旨は、こういうことです。
これは、一種の保険です。
 資本主義とは、計画経済と異なり、何が起こるか、わからないという、
不確実性があります。不確定性があります。
この不確実性と不確定性が、資本主義の特徴です。
それゆえ、資本主義には、保険が必要です。
資本主義が発達するには、保険制度が発達している必要があります。
資本主義の発達の基礎に、保険制度というものがあります。
 ところで、インターネットで、こんなニュースが流れていました。
「国営イラン放送によると、
イランが新たに開発した中距離弾道ミサイル「シャハブ3」の革命防衛隊への配備式典が、
20日、国内の革命防衛隊基地で行われた。」
このミサイルは、イスラエルやペルシャ湾岸地域の米軍基地にも、届くそうです。
イランでの、核兵器開発疑惑と中距離弾道ミサイルですか。
困りましたね。
万が一、イラン国内が不安定となり、
外交で、国内政治の問題を解決するという事態になると、
リスクが発生します。